介護現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が急速に広がっています。人材不足や業務効率化の必要性から、様々な介護DXツールが開発・導入されていますが、「本当に現場で使いやすいツールはどれなのか」という声もよく聞かれます。
本記事では、全国の介護施設で働く介護職員300名を対象に実施したアンケート調査をもとに、「現場で本当に使いやすい」と評価された介護DXツールをランキング形式で紹介します。選定基準は、操作のしやすさ、業務効率化への貢献度、導入・運用コスト、サポート体制など、介護現場の視点を重視しています。
これから介護DXの導入を検討している施設の方々や、すでに導入しているけれどより良いツールを探している方々の参考になれば幸いです。
調査概要

調査方法: オンラインアンケート
対象: 介護施設(特養、老健、グループホーム、デイサービスなど)で働く介護職員300名
調査期間: 2024年2月1日〜2月28日
回答者の属性:
- 年齢層: 20代(15%)、30代(28%)、40代(32%)、50代以上(25%)
- 職種: 介護職(70%)、看護職(15%)、ケアマネジャー(10%)、その他(5%)
- 勤務先: 特別養護老人ホーム(30%)、老人保健施設(20%)、グループホーム(15%)、デイサービス(20%)、訪問介護(10%)、その他(5%)
第1位: 「カイポケ」 – オールインワン型介護ソフト
総合評価: ★★★★★ (4.8/5.0)
導入施設数: 約15,000施設
選ばれた理由
カイポケは、記録業務から請求業務、シフト管理、ケアプラン作成まで、介護業務に必要な機能をオールインワンで提供するクラウド型ソフトウェアです。「使いやすさ」と「機能の充実度」のバランスが評価され、総合満足度No.1となりました。
特に高評価だったのは以下の点です。
直感的な操作性が多くの現場スタッフから支持されています。タッチ操作にも対応しており、ITリテラシーに自信がない職員でも短期間で操作に慣れることができます。また、記録の入力項目をカスタマイズできるため、各施設の運用に合わせた設定が可能です。これにより、記録時間の大幅削減を実現している施設が多いようです。
複数の業務システムを一元管理できるため、データの二重入力や転記ミスを防止できます。特に介護記録と請求業務の連携が評価されており、「月末の請求作業が半日で終わるようになった」という声も寄せられています。
クラウド型のため、場所を選ばず情報の閲覧・入力が可能です。タブレットやスマートフォンからもアクセスでき、訪問介護や多拠点運営の法人からの評価が特に高くなっています。
充実したサポート体制も高評価のポイントです。導入時の丁寧な研修はもちろん、導入後も電話やチャットでのサポートがあり、疑問点をすぐに解決できる点が現場から高く評価されています。
現場の声
「以前は記録に1日2時間以上かかっていましたが、カイポケ導入後は半分以下になりました。特に選択式の入力フォームが時短につながっています」(特養・介護主任・40代)
「複数の書類を作り直す手間が省け、しかも誤記や記入漏れが減りました。データが連動しているので、一度入力すれば関連する帳票に反映される点が素晴らしい」(老健・ケアマネジャー・50代)
「スマホからも記録できるので、利用者さんの傍らですぐに記録できるようになりました。情報の鮮度と正確性が上がったと感じています」(グループホーム・介護職・30代)
改善点としての声
「初期設定が少し複雑で、カスタマイズにはIT知識が必要」 「小規模事業所にとってはコストが少し高い」 「一部機能の使い方が分かりづらい」
第2位: 「ケアカルテ」 – シンプル操作の介護記録システム
総合評価: ★★★★☆ (4.6/5.0)
導入施設数: 約10,000施設
選ばれた理由
ケアカルテは、シンプルな操作性と充実した記録機能に特化したクラウド型介護記録システムです。「とにかく使いやすい」という点で高評価を獲得しました。
特に高評価だったのは以下の点です。
極めてシンプルなインターフェースを採用しており、パソコン操作に不慣れな職員でも直感的に操作できます。画面遷移が少なく、必要な情報にすぐにアクセスできる設計は、忙しい介護現場から高い支持を集めています。
音声入力機能が充実しており、話しながら記録を入力できます。特に詳細な経過記録などの文章入力で重宝されており、「手が離せない場面でも記録できる」と現場からの評価が高いです。
バイタルデータの視覚化やグラフ表示が分かりやすく、利用者の状態変化を一目で把握できます。これにより、申し送りや情報共有がスムーズになったという声が多く寄せられています。
段階的な導入プランが用意されており、小規模な事業所から大規模な法人まで、規模に応じた契約プランを選べる点も評価されています。必要な機能だけを選んで導入できるため、コストパフォーマンスが高いとの声も多く聞かれました。
現場の声
「画面が見やすく、ボタンも大きいので、パソコンが苦手な職員も迷わず使えています。高齢のスタッフからも『これなら使える』と好評です」(デイサービス・生活相談員・40代)
「音声入力機能が本当に助かります。両手が塞がっているときや、移動中にも記録できるので、後回しにしたり忘れたりすることが減りました」(訪問介護・サービス提供責任者・30代)
「利用者さんの状態変化をグラフで見られるので、微妙な変化にも気づきやすくなりました。家族への説明もデータを見せながらできるので、理解してもらいやすくなっています」(グループホーム・計画作成担当者・40代)
改善点としての声
「請求業務などの事務機能がないので、別システムとの併用が必要」 「複数の利用者の記録を一括で入力する機能がほしい」 「インターネット環境に依存するため、通信トラブル時の対応が不安」
第3位: 「ケアマネジメントオンライン」 – ケアマネ業務特化型
総合評価: ★★★★☆ (4.5/5.0)
導入施設数: 約8,000事業所
選ばれた理由
ケアマネジメントオンラインは、ケアマネジャーの業務効率化に特化したシステムです。ケアプラン作成からモニタリング、給付管理まで、ケアマネジメントサイクルを一貫してサポートする機能が高く評価されました。
特に高評価だったのは以下の点です。
ケアプラン作成の効率化が顕著で、アセスメント情報から適切なサービス内容を自動提案する機能が好評です。過去のプランや類似事例を参照できる機能も搭載されており、「質の高いケアプラン作成がスピーディにできる」との評価を得ています。
サービス担当者会議の調整機能が充実しており、関係者のスケジュール調整や議事録作成、資料共有までをシステム上で完結できます。これにより会議準備の時間が大幅に短縮されたという声が多く寄せられています。
モニタリング支援機能により、訪問スケジュールの管理やモニタリングシートの作成が効率化されます。また、過去の経過記録やサービス提供状況を簡単に参照できるため、質の高いモニタリングが可能になるとの評価があります。
介護保険制度改正への迅速な対応も高評価のポイントです。改正情報がアップデートで反映されるため、常に最新の制度に沿ったケアプランが作成できる安心感があるという声が聞かれました。
現場の声
「給付管理業務が格段に楽になりました。サービス実績の取り込みから国保連への請求まで、ほぼ自動化されています」(居宅介護支援事業所・主任ケアマネジャー・50代)
「アセスメントの質が向上しました。システムが自動で課題を抽出してくれるので、見落としが減り、多角的な視点で利用者を支援できるようになった気がします」(地域包括支援センター・社会福祉士・40代)
「複数のサービス事業所とスムーズに情報共有できるようになり、連携が強化されました。特に変更時の連絡が迅速になったことで、サービスの一貫性が保てています」(居宅介護支援事業所・ケアマネジャー・30代)
改善点としての声
「初期設定や入力項目が多く、導入当初は業務量が増える」 「小規模事業所には機能が多すぎて使いこなせない部分もある」 「利用料が高めで、個人事業主には負担が大きい」
第4位: 「シフトボード」 – 介護向けシフト管理システム
総合評価: ★★★★☆ (4.3/5.0)
導入施設数: 約7,000施設
選ばれた理由
シフトボードは、介護施設特有の複雑なシフト管理に特化したシステムです。24時間体制の施設運営や多様な勤務形態に対応する柔軟性が高く評価されました。
特に高評価だったのは以下の点です。
スタッフ自身がスマートフォンからシフト希望を入力できるため、管理者の集計作業が大幅に削減されます。また、希望シフトと実際のシフトの調整も視覚的に行えるため、公平かつ効率的なシフト作成が可能になったという声が多く聞かれました。
勤務実績の自動集計機能により、残業時間や夜勤回数の管理が容易になります。特に夜勤回数の上限管理や、特定のスタッフへの業務集中の防止など、労務管理の面で大きなメリットがあるとの評価が得られています。
人員配置基準のチェック機能が搭載されており、各時間帯の必要人数を割り込んでいないかを自動確認します。これにより、基準違反のリスクを減らし、安全なケア提供体制を維持できるとの声が寄せられています。
急な欠勤や勤務変更にも柔軟に対応できる機能が充実しており、代替スタッフの検索やシフト交代の調整をシステム上で完結できます。これにより急な人員不足への対応がスムーズになり、現場のストレス軽減につながっているとの評価があります。
現場の声
「以前はシフト作成に3日かかっていましたが、今では半日で完了します。特に夜勤の偏りがなくなり、スタッフからの不満も減りました」(特養・介護主任・40代)
「スマホでシフト確認ができるようになり、電話での問い合わせが激減。電話対応に追われる時間が減り、本来の業務に集中できるようになりました」(老健・事務長・50代)
「急な欠勤が出ても、代替候補者の検索がすぐにできるので、対応が早くなりました。『誰に頼めばいいか』で悩む時間が減り、精神的な負担も軽減されています」(デイサービス・管理者・30代)
改善点としての声
「複雑なパターンの勤務体系に対応しきれないことがある」 「給与計算システムとの連携をさらに強化してほしい」 「初期設定が複雑で専門知識が必要」
第5位: 「ケアモニター」 – 見守り支援システム
総合評価: ★★★★☆ (4.2/5.0)
導入施設数: 約5,000施設
選ばれた理由
ケアモニターは、センサー技術を活用した見守り支援システムです。利用者の安全確保と職員の業務負担軽減を両立する点が高く評価されました。
特に高評価だったのは以下の点です。
非接触型センサーにより、利用者のプライバシーを侵害せずに見守りが可能です。ベッドからの離床や長時間の動きがないなどの異常を検知すると、スタッフのスマートフォンやタブレットに通知が届く仕組みで、「必要なときに必要な対応ができる」との評価が高いです。
転倒リスクの高い利用者の見守り強化に効果的で、特に夜間の人員が限られる時間帯での事故防止に貢献しているという声が多く聞かれました。実際に、導入施設では転倒事故が平均30%減少したというデータもあります。
利用者ごとに見守りレベルを設定できるため、個別ケアの実践につながっています。自立度の高い利用者には最小限の見守りを、リスクの高い利用者には手厚い見守りを設定できる柔軟性が評価されています。
蓄積されたデータを分析することで、利用者の生活リズムや行動パターンを把握できます。この情報をケアプランに反映させることで、より個別性の高いケアの提供が可能になるとの声も寄せられています。
現場の声
「夜間の巡視回数を減らせるようになり、利用者の睡眠の質も向上しました。万が一の時だけ通知が来るので、必要な場面で迅速に対応できるようになっています」(特養・夜勤専従介護職・30代)
「センサーマットより格段に使いやすく、誤報も少ないです。何より利用者さんがセンサーを気にする様子がないので、精神的な安心感があります」(グループホーム・介護職・40代)
「データの蓄積により、ある利用者さんが毎晩2時頃にトイレに行くパターンが判明。予防的にトイレ誘導を行うようにしたら、夜間のトラブルが激減しました」(老健・ケアワーカー・20代)
改善点としての声
「初期導入コストが高い」 「Wi-Fi環境が不安定だと誤作動することがある」 「バッテリー寿命が短いデバイスがある」
介護DXツール選びのポイント
調査結果から見えてきた、「使いやすい」と評価される介護DXツールの共通点をまとめました。導入検討の際の参考にしてください。
1. 現場目線の操作性
ランキング上位のツールに共通するのは、「現場目線の操作性」です。ITリテラシーに自信がない職員でも直感的に操作できるシンプルなインターフェース、大きなボタンやタッチ操作への対応、最小限の画面遷移など、忙しい介護現場での使いやすさを重視した設計が重要です。
導入前のデモンストレーションでは、実際に現場で使用する職員に操作してもらい、感想を聞くことをおすすめします。
2. 段階的な導入が可能なこと
一度にすべての機能を導入するのではなく、小さく始めて徐々に拡大できるシステムが成功しやすい傾向にあります。例えば、まずは記録機能だけを導入し、慣れてきたら請求業務やシフト管理など他の機能も追加していく方法です。
機能を選んで導入できるフレキシブルなプランがあるか、初期費用を抑えて月額料金で利用できるサブスクリプション型かなどをチェックしましょう。
3. 充実したサポート体制
導入後のサポート体制は非常に重要です。特に導入初期は様々な質問や不安が生じるため、電話やチャットで気軽に問い合わせできるサポート窓口の存在は大きな安心材料となります。
また、定期的なアップデートや、制度改正への対応スピードも重要なチェックポイントです。メンテナンスが途絶えているシステムは将来的なリスクが高まります。
4. 他システムとの連携性
介護業務は多岐にわたるため、一つのシステムですべてをカバーできないことも少なくありません。そのため、既存システムや他のツールとの連携がスムーズにできるかどうかも重要です。
API連携の有無や、データのエクスポート・インポート機能などをチェックしておくと、将来的な拡張性が高まります。
5. コストパフォーマンス
初期費用、月額費用に加え、追加オプションや保守料金など、総合的なコストを比較することが大切です。安価なツールに飛びつくのではなく、導入による業務効率化や人件費削減効果も含めた費用対効果を検討しましょう。
また、補助金や助成金の活用可能性も調査することをおすすめします。厚生労働省の「介護ロボット・ICT導入支援事業」など、導入コストを抑える制度もあります。
まとめ:介護DXツールは「目的」ではなく「手段」
本記事では、現場で実際に使われている介護DXツールの中から、特に評価の高かった5つを紹介しました。どのツールも「使いやすさ」を重視し、介護現場の業務効率化に貢献しています。
ただし、忘れてはならないのは、介護DXツールはあくまで「手段」であり「目的」ではないということです。導入の目的は、最終的には「利用者へのケアの質向上」にあります。業務効率化によって生み出された時間を、直接的なケアや利用者とのコミュニケーションに還元できてこそ、真の意味でのDXと言えるでしょう。
自施設の課題や特性を見極めながら、本当に必要なツールを選び、現場に無理なく定着させていくことが、介護DXを成功させる鍵となります。今回のランキングが、そんな介護DXの第一歩をサポートできれば幸いです。
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