
少ない職員で多くの利用者をケアしなければならない介護現場では、「見守り」の質と効率の両立が常に課題です。
転倒、夜間徘徊、急変、離床――こうしたリスクをいち早く察知し、事故を未然に防ぐために注目されているのが**「見守りセンサー」**の存在です。
しかし、導入を検討しようとすると、次のような悩みに直面する方も多いのではないでしょうか?
「種類が多すぎて、どれを選べばいいか分からない」
「センサーによって何ができるの?」
「うちの施設に合うのはどのタイプ?」
この記事では、介護現場で導入が進む見守りセンサーをタイプ別に比較しながら、用途やメリット・デメリットを徹底解説。
「どれが一番役に立つのか?」を、現場の視点で分かりやすくお伝えします。
見守りセンサーの基本タイプと分類
介護施設や在宅介護で使われる見守りセンサーは、主に以下の4つのタイプに分類されます。
① ベッドセンサー型(体圧・離床検知)
【主な特徴】
- ベッドに敷くだけのマット型、または内蔵型
- 利用者が起き上がった・離床した際に通知
- 呼吸や心拍の変化も感知する高機能タイプも存在
【代表製品】
- パラマウントベッド「眠りSCAN」
- フランスベッド「見守りライフ」
【メリット】
- 非接触で自然に使える
- 離床のタイミングを正確に検知
- 呼吸・心拍モニタリングで急変にも対応
【デメリット】
- ベッドから出てしまうと追跡できない
- 布団の厚みや寝相によっては感度が下がる
② 赤外線・人感センサー型
【主な特徴】
- 赤外線やモーションセンサーで動きを感知
- ドアの開閉、ベッドサイドの動きなどを検知可能
- 小型で設置が簡単
【代表製品】
- アイホン「Care Eye」
- セコム「見守りシステムHitomeQ」
【メリット】
- ドアやトイレの出入りもカバーできる
- 安価で導入しやすい
- 既存の部屋でも簡単に設置可能
【デメリット】
- 精度にややばらつきあり
- カメラを使うタイプはプライバシー面の配慮が必要
③ ウェアラブル型(装着型センサー)
【主な特徴】
- 利用者の身体に直接装着(リストバンド、腰ベルト等)
- 歩行中の転倒や心拍の急変を検知
- GPS付きの製品もあり徘徊防止に対応
【代表製品】
- MTヘルスケア「Mi-Look」
- ソニーネットワーク「GincoCare」
【メリット】
- ベッド外の行動までカバーできる
- 転倒の瞬間を正確に検知できる
- 家族との位置共有も可能
【デメリット】
- 装着を嫌がる高齢者も多い
- バッテリー管理・充電の手間がある
④ カメラ型(AI搭載・映像解析)
【主な特徴】
- 室内に設置されたカメラで動作・姿勢を解析
- 転倒予兆や異常行動の早期検知が可能
- 映像記録による振り返りができる
【代表製品】
- エコナビスタ「ライフリズムナビ+Dr.」
- パナソニック「LIFELENS」
- セコム「HitomeQ ケアサポート」
【メリット】
- 転倒・うずくまりなど細かな動きもAIで識別
- 夜間の徘徊や突発的な行動も把握しやすい
- リアルタイム映像+通知で迅速対応が可能
【デメリット】
- カメラ設置への心理的抵抗(プライバシー問題)
- 通信環境の安定性が必要
- 初期導入コストが高め
「どれが一番役に立つのか?」選定のポイント
施設の目的・状況に合っているか
- 夜間の離床が多い→ベッドセンサー型
- 徘徊や転倒が心配→人感・カメラ・ウェアラブル型
- 少人数体制での見守りが必要→AI解析付きカメラ型
利用者の状態や、施設の職員配置、夜勤体制によって、必要なセンサーは変わります。
「便利そうだから」ではなく、「自分たちの課題に合っているか」で選ぶことが重要です。
操作性・サポート体制
- 職員がすぐに使いこなせるインターフェースか
- 導入後の研修やトラブル対応は充実しているか
- 家族や他部署との情報共有に連携できるか
導入が成功している施設は、**“機能性”だけでなく“使いやすさ”と“サポート体制”**を重視しています。
導入事例:センサーが業務と安心を支えた現場
ケース1:夜勤1名体制でも安心の見守りが可能に(小規模特養)
AIカメラ型の見守りシステムを導入し、**「ベッドからの離床→転倒までの流れをリアルタイムで通知」**する仕組みを構築。
職員1人でも的確な対応が可能になり、夜間巡視の回数を40%削減できたという成果が出ています。
ケース2:ウェアラブルセンサーで徘徊を早期発見(グループホーム)
腰に装着するセンサーで、夜間の室内移動をリアルタイムで把握。
転倒前のふらつきや徘徊の傾向が可視化され、職員の“見守りの目”を強化するツールとして定着しています。
まとめ:正解はひとつじゃない、“現場に合う”が最良の選択
見守りセンサーにはさまざまな種類と機能がありますが、「どれが一番役に立つか」は、施設の課題と目的によって異なります。
- 離床検知で事故を減らしたいのか
- 転倒の瞬間を捉えたいのか
- 巡視の回数を減らしたいのか
- 職員の負担を軽くしたいのか
その答えによって、選ぶべきセンサーは変わります。
大切なのは、「何を防ぎたいのか」「誰を守りたいのか」という視点で、ツールを“使いこなす設計”をすることです。
テクノロジーは、介護の現場に安心と余裕をもたらす“もうひとつの目”になり得ます。
その目が、職員と利用者の未来をより良いものにする支えとなるよう、最適なセンサー選びから一歩を踏み出してみませんか?
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