DX化の壁!「ITが苦手な職員」をどうサポートする?

介護現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む中で、ほとんどの事業所が直面する共通の課題があります。
それが、「ITが苦手な職員」の存在です。

職員の中にはスマートフォンやパソコンの操作に慣れていない人も多く、特に中高年のベテラン職員の中には、「新しいことには抵抗がある」「間違えるのが怖い」と不安を感じる人も少なくありません。

実際、介護施設でシステムを導入しても、**「操作がわからないから使わない」**という理由で現場に定着しないケースは少なくないのです。

しかし、DXの成功は、こうした職員をどうサポートし、どう巻き込むかにかかっています。
この記事では、「ITに不安がある人でも使えるDX」にするための考え方と、実際に成果を上げているサポート方法や導入工夫を解説していきます。


なぜITに苦手意識を持つ職員が多いのか?

介護業界の人材構成は、他産業に比べて年齢層が高めです。
職員の平均年齢は40代後半〜50代という施設も多く、**「そもそもPCやタブレットに触れる機会が少なかった」**という人も珍しくありません。

また、「教えてもらえなかった」「質問しても怒られそう」という経験から、“IT=自分には無理”という固定観念を持ってしまっていることも。

加えて、介護現場は日々の業務が多忙で、導入されたシステムを学ぶ余裕がないまま、**“自己流で使うor使わなくなる”**という流れに陥りやすいのです。


こうすればうまくいく!現場で実践されているサポート方法

1. マニュアルは“読む”より“見る”が効果的

「分厚い操作マニュアル」は、ITが苦手な人にとってはむしろプレッシャーになります。
その代わりに、画像付きの1枚マニュアルや、30秒ほどの動画マニュアルを活用する施設が増えています。

「ログインの方法」「1つの記録の書き方」など、1操作=1資料で分かるようにすることで、情報の過多を防ぎ、使いやすさを実感してもらえます。

また、掲示板や休憩室の壁に貼る「操作のワンポイント」も効果的です。

2. 「聞ける人」をチームに明示する

誰に聞いていいかわからない状況は、不安を助長します。
そこで、「ICT担当」や「デジタルサポーター」として、職場内に“聞ける人”をあらかじめ設定しておくと、職員が安心して質問できる環境が生まれます。

“ITに詳しい若手”をペアにした「デジタルバディ制度」なども効果的。
年齢や経験の差を超えて、「一緒に学ぶ関係性」をつくることが、抵抗感の軽減につながります

3. 「失敗してもいい」を文化にする

ITに苦手意識を持つ人が最も恐れているのは、「間違えること」です。
そのため、導入初期には**“失敗しても大丈夫”“消しても復元できる”という安心感**を伝えることが非常に重要です。

たとえば、デモ用の環境で練習できる時間を設けたり、先に導入した職員が「自分も最初は戸惑ったよ」と体験談を共有するなど、“完璧に使えなくても大丈夫”という空気をつくることがカギになります。


成功している施設に共通するサポートの考え方

実際にDX導入が定着している施設を見ると、共通して次のような姿勢が見られます。

「使えない人を責めない」
→ ITが苦手な人を“問題”と見るのではなく、“時間をかければ使えるようになる人”と捉えて支援しています。

「ツールの選定時から現場の声を聞く」
→ 導入するソフトや端末を決める際、ITが苦手な職員にも実際に触ってもらい、“操作がわかりやすいかどうか”を基準に選んでいます。

「すぐに定着しなくても、根気よく続ける」
→ 導入初期に“すぐに成果を出そう”とせず、1か月、3か月、半年と段階的に定着を目指しているのが特徴です。


ITが苦手な人にもやさしいDXを実現するには?

1. 選ぶツールは“多機能より簡単”を重視する

機能が豊富なツールは便利そうに見えますが、操作が複雑になると逆効果です。
ITに不慣れな人が多い施設では、必要な機能だけに絞った“シンプルなツール”を選ぶ方が定着しやすい傾向があります。

“触ればわかる”UI設計や、ボタン数が少ない構造のアプリなどが好まれます。

2. 初期は「全職員導入」を避ける

最初から全職員に一斉導入するのではなく、1フロア・1ユニットでの小規模導入→慣れた職員から他部署へ展開という形が効果的です。
“現場からの成功体験”が他職員の不安を和らげ、スムーズな全体展開につながります。


まとめ:DXは“全員が使えるようになる仕組み”とセットで

DXは、使える人だけが使えば良いというものではありません。
現場の職員全員が使える状態になって初めて、業務全体が楽になり、効率が生まれるのです。

ITに不安を感じている職員がいることは、決して“導入の妨げ”ではありません。
むしろ、「どうすればその人たちも安心して使えるようになるか」を考えることで、誰もが置き去りにされない、持続可能な職場づくりにつながります。

DXの目的は“変化させること”ではなく、“人が働きやすくなること”
その原点に立ち返れば、どんな職場でも、必ず“全員が使えるDX”を実現することができるはずです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました