日本の高齢化は世界でもトップクラスのスピードで進行しており、介護業界は慢性的な人手不足や業務の煩雑さといった深刻な課題を抱えています。そこで注目されているのが、DX（デジタルトランスフォーメーション）です。

「ITは苦手…」という声も多いですが、実は簡単に使えるツールも多数登場しており、現場に負担をかけずに導入できる時代になっています。本記事では、介護業界が直面する課題、DX導入によるメリット、そしてデジタルが苦手な方にも使いやすいおすすめITツール5選を紹介します。

1. 介護業界が抱える主な課題

1-1. 人手不足の深刻化

介護業界は高齢化が進む中で利用者が増える一方、若い世代の人材確保が難しく、常に人手不足の状態が続いています。政府の調査によれば、2025年には全国で約38万人の介護職員が不足すると予測されています。

人手が足りないことで、一人当たりの業務量が増加し、離職率の上昇という悪循環に陥るケースも少なくありません。結果的に、ケアの質にも影響を及ぼし、利用者満足度の低下にもつながります。

1-2. 業務の非効率性

多くの介護現場では、記録や情報共有が紙ベースで行われていることが今も多く、転記ミスや情報の抜け落ちなどのリスクも発生しています。シフト調整、申し送り、利用者の健康状態の記録など、さまざまな業務が煩雑になりがちです。

加えて、行政への報告や請求業務などもアナログなプロセスが残っており、現場スタッフが本来の介護業務以外に多くの時間を取られているという問題もあります。

1-3. 高齢者と家族のニーズの多様化

今や利用者やその家族の期待値も高く、「できるだけ自宅で生活したい」「介護の様子をリアルタイムで確認したい」など、個別ニーズへの対応が求められる時代になりました。

しかし、多忙なスタッフが個々の希望に対応するのは簡単ではありません。こうしたニーズを満たすためには、情報の可視化と円滑なコミュニケーション手段の整備が急務です。

2. DX導入によって期待できる変化

2-1. 業務の効率化と負担軽減

DXの最も大きな利点の一つが業務の効率化です。例えば、スマートフォンやタブレットで介護記録を入力できるアプリを導入することで、手書きの作業が不要になり、1日あたり数時間の業務短縮が可能になるケースもあります。

また、音声入力や自動記録機能を活用すれば、ITに不慣れなスタッフでも直感的に操作可能で、介護のプロがテクノロジーに振り回されることなく働ける環境が整います。

2-2. 情報の見える化と共有のスムーズ化

クラウドを活用することで、利用者のバイタル情報、介護記録、ケアプランなどのデータが一元管理され、誰でもリアルタイムで確認できるようになります。

また、家族への共有も容易になり、「今日はしっかり食事ができました」「○時にリハビリを行いました」といった情報をアプリ経由で伝えることで、家族の安心感や信頼にもつながります。

2-3. データ活用によるサービスの質向上

日々の記録がデータとして蓄積されると、そこから利用者ごとの行動パターンや健康状態の変化が見えてきます。これにより、体調の変化を早期に察知したり、より個別化されたケアプランを作成したりと、科学的介護が実現できるのです。

3. デジタル苦手な人必見！介護で役立つ簡単ITツール5選

1. まもるくん（見守りセンサー）

赤外線センサーやマットセンサーを使用して、離床や転倒を検知。通知はスマホに自動送信され、夜間の見守り負担を大きく軽減します。設定も非常にシンプルで、ボタンを押すだけでスタート可能です。

2. ケア記録くん（音声記録アプリ）

スマホに話しかけるだけで、自動でテキスト化してくれる音声入力対応の記録アプリ。介護業務の合間に使えるので、手がふさがっているときにも便利です。誤入力が少なく、確認画面で簡単に修正できます。

3. LINE WORKS（業務連絡アプリ）

LINEとほぼ同じUIで、介護スタッフ同士の連絡やシフト調整、ファイル共有などが簡単に行えます。すでにLINEに慣れている世代には馴染みやすく、導入障壁が低いのも魅力。

4. みえるケア（家族連携ツール）

施設と家族をつなぐコミュニケーションアプリ。写真や動画を簡単に共有でき、介護の現場を「見える化」できます。利用者の様子を定期的に発信することで、家族との信頼関係の構築にも役立ちます。

5. おたすけタブレット（高齢者向け）

文字が大きく、アイコンもシンプルで、IT機器に不慣れな高齢者でも簡単に使える設計。リモートでの健康チェック、服薬通知、テレビ電話なども一台で対応できます。家族とも簡単に繋がれる機能が人気です。

4. DX導入のポイントと注意点

4-1. 現場に合ったツールを選ぶ

「高機能＝良いツール」ではありません。現場で実際に使う人が簡単に操作できるか、直感的に理解できるかが重要です。現場スタッフを巻き込んで導入検討を行い、実用性を重視した選定を行いましょう。

4-2. 研修やサポート体制を整える

DXの導入にはスタッフの理解と協力が不可欠です。導入初期には操作説明会やトライアル期間を設けて、少しずつ慣れていくプロセスを作ることが重要です。また、ベンダーのサポート体制が整っているかも確認しておきましょう。

4-3. セキュリティへの配慮も忘れずに

介護業務では個人情報を多く扱うため、セキュリティ対策は必須です。パスワード管理、アクセス制限、データのバックアップ体制など、ツール選定の際には信頼性の高いサービスを選ぶことが大切です。

5. まとめ

介護業界は多くの課題を抱えながらも、テクノロジーの活用によって未来が切り開かれようとしています。DXを活用することで、現場の業務効率化はもちろん、介護の質や働きやすさ、家族の安心感も大きく向上します。

難しい操作や専門知識は不要な、簡単かつ効果的なツールも多数登場しており、今こそ導入の好機です。現場に合ったツールを選び、小さな一歩からデジタル活用を始めてみましょう。