AIが介護記録を自動で作成!?実際に使ってみた結果

介護の現場で、日々職員の時間を大きく奪っている業務のひとつが「介護記録の作成」です。食事、排泄、入浴、バイタルサイン、転倒など、1日に何十件も記録しなければならず、それに加えて利用者ごとの特記事項や申し送りなども記録が必要です。

「記録作業に追われて、肝心のケアが手薄になる」
そんな声が介護現場から上がり続けるなか、登場したのがAIによる自動記録作成システムです。

今回は、実際にAIを活用して介護記録を自動作成した事例をもとに、どのような効果があったのか、どんな課題があったのかを検証していきます。


介護記録とは?そしてなぜ「負担」なのか

法的にも求められる“必須業務”

介護記録は、介護保険制度のもとで提供されるサービスの質を担保し、適切な報酬請求を行うための根拠資料です。そのため、施設・在宅を問わず、記録は義務付けられています

1人あたり1日数件以上の記録が必要となり、それが10人、20人と増えれば、スタッフは1日中記録に追われることも少なくありません。

記録にかかる「時間」と「精神的な負担」

  • 食事:完食/一部/拒否、内容も詳細に記録
  • 排泄:時間、介助の有無、量、異常の有無
  • 体調:体温・血圧・脈拍、顔色や発言の変化など
  • 精神面:情緒の安定、不安や混乱、認知症の様子
  • 特記事項:転倒、けが、発熱、家族からの連絡

これらを毎日、複数の職員が記録するには、相当な時間と労力が必要です。特にシフトの終わり間際や夜勤帯では、「書ききれない」「抜け漏れが出る」などの問題が頻発します。


AIが記録を自動で作るってどういうこと?

音声入力×自然言語処理で記録を生成

現在導入が進んでいるAI記録システムは、以下のような仕組みで動いています:

  1. 介護職員がスマートフォンや端末に話しかける
  2. AIが音声をテキストに自動変換(音声認識)
  3. 自然言語処理によって記録文として成形
  4. 記録フォーマットに自動で反映される

たとえば、「○○さん、昼食は完食。食べるスピードはいつもより少し早めで、咀嚼もスムーズでした」と話すだけで、AIが必要な項目を判断し、記録として登録してくれるのです。

導入されている代表的なシステム

  • ケアコラボ
  • やさしい手の「けあレポ」
  • NDソフトウェアの「ほのぼのNEXT」音声記録機能
  • エピックベースの「CareWiz」シリーズ

これらのツールは、音声認識だけでなく、記録のパターン学習や予測入力機能なども備えており、使えば使うほど精度が上がっていく仕組みになっています。


実際に使ってみた現場の声

ケース1:特別養護老人ホーム(都内・100床)

都内のある特養では、約30名の介護職員がCareWizを導入。朝のバイタルチェックや食事の記録などを音声で入力することで、記録作業にかかる時間が1日平均45分→20分に削減されました。

職員の声:

「入力にかかる時間が半分以下になり、利用者と過ごす時間が増えました。手がふさがっていても“話すだけ”で済むのが本当に楽です。」

「苦手な文章作成のストレスが減った。記録ミスも明らかに減っています。」

ケース2:小規模多機能施設(地方都市・登録25名)

こちらでは、非ベテラン職員の記録スキルのバラつきに課題がありましたが、AI記録導入後は文章の質の均一化が進み、申し送りもスムーズになったとのことです。

管理者の声:

「文体が統一され、誰の記録かに関わらず読みやすくなりました。新人でも“内容を話すだけ”で記録が残るので安心です。」


メリットと課題、導入時のポイント

主なメリット

  • 業務時間の大幅短縮
  • 職員の心理的負担軽減(書くことが苦手な人にも◎)
  • 記録ミス・抜け漏れの防止
  • 申し送りやカンファレンス資料にも転用しやすい
  • 音声対応で手が離せない場面でも使える

導入時の課題と注意点

  • 音声認識の精度に個人差あり(方言や滑舌)
  • 利用環境によっては周囲の雑音が影響する
  • 完全自動ではなく「最後のチェック」は人の目が必要
  • スマホやタブレットの操作に不慣れな人には学習が必要

特に大切なのは、「AIがすべてをやってくれると思い込まない」こと。AIは“記録の補助ツール”であり、最終的な確認・判断はやはり人間の手に委ねられます。


介護の未来に向けて:AIは“記録のパートナー”

介護職は「人と人の関係性」が中心である以上、記録の効率化によってケアの質が落ちてしまっては本末転倒です。しかし、AIが記録業務を支援することで、本来注ぐべき“対人ケア”に集中できる環境が生まれるというのは、現場にとって大きな恩恵です。

あるベテラン介護士の言葉が印象的です。

「AIに記録を任せて、私は目の前の“人の声”を聞く時間ができた。それが一番の変化です」


まとめ:AIで記録作業はここまで変わる

「AIが介護記録を自動で作成するなんて、本当に使えるの?」という疑問に対して、今の答えは――**「使い方次第で、大きな力になる」**というものです。

  • 時間を生み出し
  • ミスを減らし
  • 書くストレスを軽減し
  • ケアの質を高める

AI記録は、これからの介護にとって“欠かせないチームメイト”になりつつあります。まだ発展途上の技術ではありますが、その可能性は確実に現場で広がりはじめています。

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